KPI導入は成功するか?その甘い罠(or 嘘)
2010年08月09日
※8月13日追記
KPIについての補足を書きました。
KPIについてある程度知識がある方やアクセス解析中級以上の方は、
こっちの方がわかりやすいかも知れません。
▼ウェブKPIとは何だろうか?
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最近いろんなところで
KPIという言葉を聞くようになりました。
アクセス解析成功の秘訣は
「目標設定とKPIだ!」というのです。
僕はこのことに賛成でもあるし、
反対でもあります。
あっ、この話を進める前にKPIについておさらいしましょう。
KPIとは
Key Performance Indicatorの略で、
「重要業績指標」と訳されるようです。
なるほど。重要業・・・??
せっかくの日本語になっても、
何をいっているか意味がわかりません。
これが僕がKPIに反対する一番目の理由です。
(半分冗談ですが半分は本気)
ということで、今日は最近人気がある
KPIを取り上げてみたいと思います。
あくまで僕の独断と経験則なので、
役に立つかどうかはわかりませんが、、
少なくとも3文字のアルファベットを駆使して
あなたに忍び寄る魔術師に対して、
少し注意してもらうことができると思います。
KPIについてよくわからない人には、
「こりゃ、わからない自分の方が正しいわ!」
と自信を深めて貰えると思います。
さて、先程は意味がわからないと言いましたが、
一般的にアクセス解析のKPIとは、
「サイトを良くするために確認すべき大切な数値。
例えばユニークユーザ数とか総PVとか直帰率とか。」
と思われています。
でももうちょっと広義の意味から入りましょう。
例えば、AMAZONのショッピングカートが、
3回に1回の割合でエラーになっていたらこれは大問題です。
エラー発生率はなんと33%!どんどん顧客が離れていきます。
エラー発生率は、僕が万馬券を当てた確率と一緒でないとダメですね。
(注:0%のことです。)
じゃぁ、この時にAMAZONが計測すべき値は、
「カートのエラー発生率」
っていうことで、これがいわゆるKPIです。
もともとKPIは自動車なんかの製造業相手に
ザ・ゴールなんかを書いた
ゴールドラッド博士あたりが提唱していますね。
※2010年8月13日追記:書いていなかったです、すみません。
▼ザ・ゴール(ゴールドラット著)
KPIがなぜ人気かというと、
曖昧さを排除して評価がしやすくなるからです。
つまり「僕が万馬券にあたった確率」っていうより
“0%”のように数値化するとわかりやすいってことがポイントです。
いかにも経営者が気に入りそう。。
でもここで多くの人が悩むのが、
「そりゃエラー発生率とかはわかりやすけどさ。。
じゃぁ、私のサイトでは何の数値を計測したらいいんだ?」
ってことです。
でも、これは言い換えれば、
アクセス解析の主要問題である
「何の数値を見れば(手っ取り早く)うまくいくのですか?」
という問題と一緒です。
それがKPIという3文字で丁寧に包み隠されています。
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※何の数値を見るべきか?については以前こんなエントリを書きました。
▼アクセス解析のデータを読み解くコツ
そしてこのあたりがIT業界の3文字が好きな人間に
突っ込まれるポイントです。
「あなたのサイトのKPIを教えて差し上げましょうか?グフフ」
という怪しい魔法をかけてきます。
もちろん、正しい魔法を知っている方もいらっしゃいます。
その場合は大丈夫なのですが。。
ユーザーとしてはその判断が難しいですよね。
僕がKPI導入に反対な2番目の理由です。
僕が思うに、
そもそもWEBサイトのKPI設定はとても難しいです。
その理由をご説明しましょう。
ちょっとこの問題を考えてみてください。
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地球温暖化を食い止めましょう。
何がキーファクター(KFS)ですか?
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難問です。
火力発電所の発電量という人もいれば、
酔っ払いが二酸化炭素をたくさん吐き出すんじゃないの?
という人もいると思います。
植林が決め手という人もいるでしょう。
おそらく全部正解であり、
全部間違っています。
なぜかというと、こういった曖昧な問題は
相互依存した私達が住む”現実の世界”で起こっています。
どれかの”数値”を解決すれば、
簡単にうまくいくようなものではないのは、
直感的に理解できます。
地球温暖化を解決するためには、
“全体のバランスをとりながら”
解決にあたる必要があります。
WEBサイトにおけるユーザー反応も
まさにこの世の現実のそのものなので、、
例えば直帰率を10%改善したからといって、
成約率が即アップするような簡単なものではないです。
つまり全てがバランスしており、
どれかひとつに注力するようなものでもないのです。
成功要因がダイナミックに変化する上、
絞り込むのがとてつもなく難しいというのが
僕がKPIに反対するもうひとつの理由です。
さて、ここまで反対意見を言ってしまいましたが、
ここで僕が”賛成”なポイントをお伝えしましょう。
それは
「数値化するとアイディアが湧く」
という点です。
目標を定めると、
なぜだか知りませんが、
僕も含めてみんなアイディアが湧きます。
そこで多くの場合で僕にとっての最初のKPIは、
「申し込み数を3ヶ月後に5個増やすぞ!」
という一点だけです。
これは本当はKGIなのですが、
この際そんな用語や定義はどうでもいいです。
そうすると、それに伴い集客数の目標や広告の予算などがでてきます。
グッドアイディアも出てきます。
そうすると、それも数値なので、これも大切なKPIになってきます。
以上、いくつかの数値が頭に入ったら、
あとは、テストを繰り返して、
状況を見ながら修正しているだけです。
そもそもKPIはライン作業が行える
製造業で生まれた考え方で、、
先程のKFSと呼ばれるキーファクター(成功要因)が
「考えればサルでもわかる」ことが前提です。
しかしそれをWEBに適応するには、
この世の”システム”というものについて、
物理的かつ哲学的にすごく理解している人しか、
使いこなすことは難しいかなぁと思います。
さて、長くなってきちゃいましたが、
今日の結論はこうです。
——–
KPIという錬金術(注意:僕らにとってではなく彼らにとってです!)
にこだわるよりは、キャッチコピーやデザインのひとつでも勉強して、
自分達でわかりやすい目標を
立ててやった方がうまくいく。
つまりそれは
「3ヶ月後にはあと5個販売数を伸ばしたい!
そのために今はサイトの成約率が0.5%だから
集客数をあと1000人増やそう。
じゃぁ広告費は5万円かけて、
メルマガの相互紹介も後3誌がんばるぞ!」
といった目標のこと。
——–
ほとんどの中小企業に当てはまる考え方だと思います。
僕は形式的で中身がないKPIよりは、
“自分たちの信じれる目標設定”と
“その実現のためのアイディア”が、
何よりも大切だと思います。
追伸1:
実は、もっといえばそのWEBサイトの目標が
「自分たちの船(ビジネス)が進んでいく航路」
とリンクしたときがすごいです。
例えば最近のクライアント事例でいけば
「そうだ、私達はこの悪と戦うためにビジネスをしているんだ!」
と自分たちの役割に燃えた時から、
やたらやる気になり、サイト内のアイディアは激変します。
そしてそれはとてつもないパワーをもって、
様々なKPIを自然と引き出します。
でもモチベーション3.0に記載されているように、
それを数値目標にした時から、
やる気がなくなるというのがジレンマだったりします。
▼モチベーション3.0 (ダニエルピンク著 大前研一訳)
例えば「ユーザーの悩みに毎日3件答えること」
なんていう数値目標があると、
毎日相談してくるユーザーが
自分を苦しめる魔王の手先に見えてきます。
本当は善意で丁寧に解答してあげることが、
双方にとってHappyなはずなのに。。
このあたりのシステム的な差異に気づかないと、
形式的なKPI導入はますます失敗しやすいです。
これが僕が単純なKPI導入に反対する最後の理由です。
追伸2:
ところで、温暖化ではないですがもうひとつの難問。
「この世から戦争を無くすためのキーファクター」
って、あなたはあると思いますか?
僕は教育が鍵なのかなぁとも思いつつ。。
あなたはどう思います?
コメント待ってます。